2022年冬におけるボストンの光熱費の最新動向
現在、ウクライナ戦争やコストインフレ等によりエネルギーコストの急激な上昇が問題になっていますが、ボストンにおいても特に電気代においてその現象は顕著です。今回は高等しているボストンの電気代を主に見つつ、ガス代も見ていきたいと思います。
過去10年間の電気代推移
ボストン*と米国エリア毎の過去10年間の電気代推移は以下の通りです。
過去10年を見ると、米国の中でもボストン含む北東部は電気代が高い傾向にありますが、2015年頃を境にその中でもボストンは高いです。さらに、ボストンの電気代は2022年の11月以降一段と上昇しました。各エリアでの直近1年間と10年間の上昇率を纏めると以下の通りです。
ボストンでは、前年同月比+46%、10年前比+139%と米国平均や他エリアと比較しても、突出して高いことが分かります。NBC10 BOSTONの記事によると、ニューイングランドエリアで大手の電力・ガス会社であるNational Gridは、ウクライナ戦争、高い需要、コストインフレ等複数の理由により値上げせざると得ない状況であり、2022年11月1日より、電気料金は平均で+64%、ガス料金は平均で+24%上がるとコメントしています。
*ここでいうボストンとは「Boston-Cambridge-Newton, MA-NH MSA」という統計地域のデータを参照しています。グレーターボストンとも呼ばれます。エリアの定義を確認したい場合はこちらをどうぞ。
米国主要都市の電気代
米国主要都市の電気代は以下の通りです。
上記の通り、2022年12月の電気代は、全米平均で対前年同月比+16%なのに対し、北東部は前年同月比+23%と他エリアよりもインフレ率が高いことが分かります。北東部の中でもニューヨークは前年同月比+16%、フィラデルフィアは+18%等と概ね全米平均と同水準です。その中で、北東部のインフレ率を引き上げているのは、ニューイングランドエリアの前年同月比+30%であり、その中でもボストンの前年同月比+46%が目立ちます。
2022年12月時点のボストンの電気代は、Urban Hawaii、San Diegoに次いで高い水準であり、前年同月比での上昇率については最も高い水準であることが分かります。
ボストンの電気代が高い理由
全米で電気代が高騰している理由の背景には、ウクライナ戦争によるエネルギー供給減、高い需要、コストインフレ等複数の理由があります。その中でボストンが最も高騰している主な理由は、ボストンの電気が天然ガスへの依存率が高いためです。米国では電気の38%を天然ガスに依存しているのに対し、ボストンでは52%を天然ガスに依存しています。
ニューイングランドも元々は天然ガス依存率は低く、例えば2000年においては天然ガスが14.7%と石炭の17.9%を下回っていました。しかし、2008年頃近隣のシェールガスが安価で豊富な燃料資源として出現したことや、石炭や石油に比べて炭素排出量が少ないことにより、天然ガスがニューイングランドの主力資源となりました。一方で、以下グラフのように2016年頃から米国が積極的に天然ガスを輸出するようになりました。
その中でウクライナ戦争により、世界第2位の天然ガス生産国かつ世界最大の天然ガス輸出国であったロシアが経済制裁を受けたことで、米国の天然ガス輸出量は一段と多くなり、価格上昇に拍車をかけ、ニューイングランドエリアの電気代高騰に繋がりました。
また、ニューイングランドエリアは天然ガスパイプラインの末端に位置するため、他エリアと比べて物理的に入手しづらく、冬の寒さが厳しく需要が高まる時には液化天然ガスとして輸入することで不足分を補っています。その中で、前述の通りウクライナ戦争以降天然ガス不足の欧州等への輸出が増えたことで、液化天然ガスの価格が大幅に上昇したことも、ニューイングランドエリアの電気代高騰に繋がりました。
過去10年間のガス代推移
次に、ボストンと米国エリア毎の過去10年間のガス代推移は以下の通りです。
過去10年を見ると、冬の寒さの厳しいボストンでは、暖房需要が高まる11~4月の期間ガス代が高くなる傾向にあります。電気代程ではないですが、ガス代においても他エリアと比べると比較的高い水準で推移しています。また、他エリアと同様に2021年頃から著しく上昇しています。各エリアでの直近1年間と10年間の上昇率を纏めると以下の通りです。
ボストンでは、前年同月比で+22%、10年前比で+81%と米国平均や他エリアよりも比較的上昇率が高いです。
米国主要都市のガス代
米国主要都市のガス代は以下の通りです。
2022年12月時点のボストンのガス代は、全米平均は北東部平均と比べると高い水準ではあるものの、突出して高いわけではありません。前年同月比での上昇率については+22%と、全米平均+19%よりもやや高く、北東部平均+23%よりもやや低い水準です。
まとめ
投稿者プロフィール
- 1988年生まれ。神奈川県出身。2011年に慶應義塾大学理工学部を卒業し不動産デベロッパーに入社。2017年より米国ピッツバーグ大学に留学。2019年にBeta Gamma Sigma (優秀な成績を収めた卒業生に送られる称号)で卒業しMBA取得。2019年以降米国不動産業に従事し、2021年以降ボストンを拠点にオフィスや賃貸住宅のアセットマネジメント業務に従事。
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