米国のインフレ率(2023年1月)

先日、米国の2023年1月インフレ率(CPI)が発表され、前年同月比で予想6.2%に対して結果は6.4%となり、先月に続き鈍化しました。食品とエネルギーを除くコアCPIは予測5.5%に対して結果は5.6%でした。今回もカテゴリ別のインフレ率を見ていきます。

ボストンエリアのインフレ率をご覧になりたい方は以下の記事をご覧ください。

woman sitting behind a desk using laptop and looking at items on a receipt

■米国のインフレ率推移

まず、米国の2020年以降のインフレ率(CPI)前年同月比は以下の通りです。

米国のインフレ率(CPI)
(U.S. Bureau of Labor Statisticsの情報を基に作

米国のCPIは、コロナ禍で一度低迷した後、サプライチェーンの混乱と旺盛な需要が重なり2021年5月に5%台となり、その後も段々と上昇しました。中国のゼロコロナ政策やロシアによるウクライナ侵攻がサプラインチェーンの混乱に拍車をかけ、2022年3月には8%台となりました。その後も8%以上を維持してきましたが、2022年10月に8ヶ月ぶりに7%台に鈍化し、2022年12月には1年1ヶ月ぶりに6%台になりました。とはいえ、引き続き高水準です。2022年1月は7.5%であったため、2年間で13.9%インフレしたことになります。

■米国項目インフレ率と直近半年間の推移

次に、米国のカテゴリ別インフレ率(CPI)と2022年の推移は以下の通りです。

米国のインフレ率(CPI)と直近半年間の推移
U.S. Bureau of Labor Statistics)

前年同月比で、食品は+10.1%、エネルギーは+8.7%。食品・エネルギーを除くコアCPIは+5.6%です。項目別に見ていきます。

食品

前年同月比で+10.1%、前月比で+0.5%。シリアル・ベーカリー(前年同月比+15.6%、前月比+1.0%)、乳製品・関連製品(前年同月比+14.0%、前月比+0.0%)が比較的高いです。上の表に記載はありませんが、鳥インフルエンザで供給量が落ち高騰していた卵は、前年同月比+70.1%、前月比+8.5%とさらにインフレしています。

エネルギー

前年同月比で+8.7%。前月比では直近2ヶ月連続では下落していましたが1月は+2.0%と再び上昇に転じました。前年同月比で、燃料オイル+27.7%、ガス+26.7%、電気+11.3%等、全般的に上昇しています。ガソリンは前年同月比1.5%、前月比+2.4%とインフレが収まってきているものの、ボラティリティは高いです。全米ガソリン価格も、1月下旬の価格は1ガロン$3.5と、直近の高値($5.0、2022年6月)と比較して約30%下落しているものの、前月末比と比べると+13%程インフレしています。これまで、ガソリンのインフレは2022年2月に始まったロシア・ウクライナ戦争による影響が大きかったですが、世界経済の減速に伴い需要が減少し、ロシア・ウクライナ戦争開始以前程度の水準で推移しています。

全米ガソリン価格
(U.S. Energy Information Administration)
新車・中古車

新車は、前年同月比で+5.8%、前月比で+0.2%。中古車は前年同月比で▲11.6%と大幅に下落しました。前月比で7月▲0.4%、8月▲0.1%、9月▲1.1%、10月▲2.4%、11月▲2.9%、12月▲2.5%、1月▲1.9%と、7ヶ月連続で下落しています。一方で、マンハイム指数(アメリカの中古車販売最大手のマンハイム社が発表している指数。正確には、Manheim Used Vehicle Value Index)を見ると、2022年初めから続いていた下落トレンドが2022年11月で底を打ち、2023年2月まで上がり続けています。直近の高値の257.7(2022年1月)よりは9%程度低い水準ではあるものの、インフレが再燃しないか要注意です。

マンハイム指数(アメリカの中古車販売最大手のマンハイム社が発表している指数)

マンハイム指数を車種別に見ても、全車種で価格が落ちています。一方で、2022年12月時点では全車種において前年同月比で12%以上下落していましたが、2022年2月中旬時点ではコンパクトカー等を中心に下落幅が抑えられてきています。

住居費

前年同月比で+7.9%、前月比で0.7%。3ヶ月連続でコアCPIを上回る水準でインフレしています。全体の支出の34.4%を占めるため、影響が大きいです。

航空運賃

前年同月比で+25.6%と大きく上昇している一方で、前月比では10月▲1.1%、11月▲3.0%、12月▲3.1%、1月▲2.1%と4ヶ月連続で下落しています。

■平均時給

米国の平均時給を見ると、前年同月比+4.4%、前月比+0.3%でした。2021年9月頃から5%程度の高い増加率が続いており、特にサービス業のインフレに繋がっていますが、1年5ヶ月ぶりに4.5%を切る水準に下落しました。

米国平均時給
(出典:FRED

■まとめ

米国のインフレ率(2023年1月)

  • 米国の2022年12月のインフレ率(CPI)は、前年同月比+6.4%(予測+6.2%)
  • 前年同月比で、食品は+10.1%、エネルギーは+8.7%。食品・エネルギーを除くコアCPIは+5.6%
  • 自動車関連では、前年同月比で新車+5.8%、中古車▲11.6%。中古車は前月比で7月以降7ヶ月連続で下落。
  • マンハイム指数(アメリカの中古車販売最大手のマンハイム社が発表している指数)を見ると、2022年に入ってから下落トレンドであり、2022年10月以降4ヶ月連続で全車種で下落。
  • 全体の支出の34.4%を占める住居費は前年同月比+7.9%、前月比+0.8%
  • 航空運賃は前年同月比+25.6%と高止まりしているものの、前月比では▲2.0%であり、4ヶ月連続下落
  • 米国平均時給は、前年同月比+4.4%、前月比+0.3%。2021年8月以来15ヶ月ぶりに+4.5%を切る水準へ下落

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投稿者プロフィール

Take
1988年生まれ。神奈川県出身。2011年に慶應義塾大学理工学部を卒業し不動産デベロッパーに入社。2017年より米国ピッツバーグ大学に留学。2019年にBeta Gamma Sigma (優秀な成績を収めた卒業生に送られる称号)で卒業しMBA取得。2019年以降米国不動産業に従事し、2021年以降ボストンを拠点にオフィスや賃貸住宅のアセットマネジメント業務に従事。