米国・ボストンのインフレ率(2022年7月)
先日、米国の2022年7月インフレ率(CPI)が発表されました。前年同月比で予想+8.7%に対して結果は+8.5%。ボストンエリアは前年同月比+7.0%となりました。今回もカテゴリ毎に見ていきます。
■米国のインフレ率推移
まず、米国とボストン*の2020年以降のインフレ率(CPI)前年同月比は以下の通り。
*「Boston-Cambridge-Newton, MA-NH MSA」という統計地域のデータを参照しています。エリアの定義を確認したい場合はこちらをどうぞ。
米国のインフレ率は、コロナ禍で一度低迷した後、サプライチェーンの混乱と旺盛な需要が重なり2021年5月に5%台となり、その後も上昇し続けました。中国のゼロコロナ政策やロシアによるウクライナ侵攻がサプラインチェーンの混乱に拍車をかけ、2022年3月には8%台となりました。その後も8%台を維持し、先月2022年6月には41年ぶりとなる9.1%に到達しましたが、2022年7月は8.5%と、インフレのペースが鈍化しました。2021年7月のインフレ率は5.4%であったため、2年間で約14%インフレしたことになります。
ボストンエリアにおいても、米国同様の傾向が続いています。ボストンでは住宅費のインフレが比較的抑えられていることもあり、2022年7月のインフレ率は7.0%と米国全体よりは低い水準です。
■米国カテゴリ別インフレ率と直近半年間の推移
次に、米国のカテゴリ別インフレ率(CPI)と直近半年間の推移は以下の通りです。
食品は前年同月比で+10.9%、前月比で+1.1%。エネルギーは前年同月比で+32.9%、前月比で▲4.5%。食品・エネルギーを除くコアCPIは前年同月比で+5.9%、前月比で+0.3%でした。主な項目を見ていきます。
食品
食品全体は前年同月比で+10.9%、前月比で+1.1%。シリアル・ベーカリー(前年同月比+15.0%・前月比+2.0%)、乳製品・関連製品(前年同月比+14.9%・前月比+1.7%)が比較的高いです。
エネルギー
エネルギー全体は前年同月比で+32.9%と引き続き高止まりしていますが、前月比では▲4.5%と下落に転じています。一方で、上図の通り直近半年間でのボラティリティは大きく、今後のウクライナ戦争や景気の動向も見通しづらい状況のため、ピークアウトしたかどうかは分かり兼ねる状況です。
新車・中古車
新車は前年同月比で+10.4%、前月比で+0.6%。中古車は前年同月比で+7.1%。前月比で+0.3%。共にコアCPI(前年同月比+5.9%、前月比+0.3%)と同等以上の水準でインフレしています。関連項目としては、自動車整備・修理(前年同月比+8.1%・前月比+1.1%、自動車保険(前年同月比+7.4%、前月比+0.9%)も見逃せません。
住居費
前年同月比で+5.7%、前月比で+0.6%。他項目と比較して突出しているわけではないものの、全体の支出の32.3%を占めるため、影響が大きいです。
航空運賃
前年同月比で+27.7%、前月比で▲9.6%。エネルギーと同様に直近半年間のボラティリティも大きく、2022年4月には前月比+21.9%であった一方で、2022年7月は前月比▲9.6%と下落しています。
ちなみに、私の住んでいるボストンから東京までのJAL直通往復便で、現時点での家族3人分の年末年始の航空運賃を確認すると$7,979でした。本日のレート$=137.00円で換算すると、1,093,123万円。100万円超です。。
■ボストン項目インフレ率と直近半年間の推移
次に、ボストンのカテゴリ別インフレ率(CPI)と直近半年間の推移は以下の通りです。
食品は前年同月比で+10.3%、2ヶ月前比で+2.6%。エネルギーは前年同月比で+43.9%、2ヶ月前比で+2.1%。食品・エネルギーを除くコアCPIは前年同月比で+3.9%、2ヶ月前比で+0.3%でした。主な項目を見ていきます。
食品
食品全体は前年同月比で+10.3%、2ヶ月前比で+2.6%。乳製品・関連製品(前年同月比+20.3%・2ヶ月前比+3.1%)のインフレが比較的高いです。
エネルギー
エネルギー全体は前年同月比で+43.9%、2ヶ月前比で+2.1%。特に、ガソリン(前年同月比で+55.1%、2ヶ月前比で+2.9%)とガス(前年同月比で+52.3%、2ヶ月前比で+7.9%)のインフレ幅が大きいです。
新車・中古車
新車は前年同月比で+6.9%、2ヶ月前比で+1.1%。中古車+6.8%。2ヶ月前比で+2.5%。共にボストンのコアCPI(前年同月比+3.9%、前月比+0.3%)以上の水準でインフレしています。
住居費
前年同月比で+2.8%、2ヶ月前比で+0.5%。米国全体の水準(前年同月比で+5.7%・前月比で+0.6%)より抑えられていることが、全体のインフレ率を比較的低い水準に抑えられていることに繋がっています。家賃は、前年同月比で+4.6%、2ヶ月前比で+1.5%とやや高い水準のインフレが続いてます。Coliersのレポートによると、ボストンの賃貸住宅の空室率は4.2%と過去10年間で最も低い水準で推移しており、家賃インフレに繋がっています。エリアによっては+10~20%の家賃更新の通知を受領したという話も耳にします。
■まとめ
米国
- 米国の2022年7月のインフレ率(CPI)は、前年同月比で予想+8.7%に対して結果は+8.5%。前年同月比は+0.0%
- 食品は前年同月比で+10.9%、前月比で+1.1%。エネルギーは前年同月比で+32.9%、前月比で▲4.5%
- 食品・エネルギーを除くコアCPIは前年同月比で+5.9%、前月比で+0.3%
- エネルギー全体は前年同月比で+32.9%と高水準だが、前月比では▲4.5%と下落
- 新車は前年同月比で+10.4%、前月比で+0.6%。中古車は前年同月比で+7.1%。前月比で+0.3%。自動車整備・修理(前年同月比+8.1%・前月比+1.1%、自動車保険(前年同月比+7.4%、前月比+0.9%)のインフレも高水準で推移
- 全体の支出の32.3%を占める住居費は前年同月比で+5.7%、前月比で+0.6%
ボストン
- ボストンの2022年7月のインフレ率(CPI)は、前年同月比で+7.0%、2ヶ月前比で+0.7%
- 食品は前年同月比で+10.3%、2ヶ月前比で+2.6%。エネルギーは前年同月比で+43.9%、2ヶ月前比で+2.1%
- 食品・エネルギーを除くコアCPIは前年同月比で+3.9%、2ヶ月前比で+0.3%
- エネルギー全体は前年同月比で+43.9%、2ヶ月前比で+2.1%。ガソリン(前年同月比で+55.1%、2ヶ月前比で+2.9%)とガス(前年同月比で+52.3%、2ヶ月前比で+7.9%)のインフレ幅が大きい
- 新車は前年同月比で+6.9%、2ヶ月前比で+1.1%。中古車+6.8%。2ヶ月前比で+2.5%
- 住居費は前年同月比で+2.8%、前月比で+0.5%
投稿者プロフィール
- 1988年生まれ。神奈川県出身。2011年に慶應義塾大学理工学部を卒業し不動産デベロッパーに入社。2017年より米国ピッツバーグ大学に留学。2019年にBeta Gamma Sigma (優秀な成績を収めた卒業生に送られる称号)で卒業しMBA取得。2019年以降米国不動産業に従事し、2021年以降ボストンを拠点にオフィスや賃貸住宅のアセットマネジメント業務に従事。
最新の投稿
- マクロ11/11/2024ボストンの移民データを徹底解剖!各国出身者の歴史と現状
- 教育09/21/2024米国駐在や留学前に必読!アメリカ史に関するオススメ書籍3選
- 教育09/20/2024アメリカ大統領のリーダーシップと歴史を徹底解説!「大統領から読むアメリカ史」
- 教育05/19/2024アメリカ史がもっと好きになる!「若い読者のためのアメリカ史」
“米国・ボストンのインフレ率(2022年7月)” に対して1件のコメントがあります。
コメントは受け付けていません。