米国のインフレ率(2022年12月)
先日、米国の2022年12月インフレ率(CPI)が発表され、前年同月比で予想6.5%に対して結果は6.5%となり、1年1ヶ月ぶりに7%を切りました。食品とエネルギーを除くコアCPIは5.7%でした。今回もカテゴリ別のインフレ率を見ていきます。
ボストンエリアのインフレ率をご覧になりたい方は以下の記事をご覧ください。
■米国のインフレ率推移
まず、米国の2020年以降のインフレ率(CPI)前年同月比は以下の通りです。
米国のCPIは、コロナ禍で一度低迷した後、サプライチェーンの混乱と旺盛な需要が重なり2021年5月に5%台となり、その後も段々と上昇しました。中国のゼロコロナ政策やロシアによるウクライナ侵攻がサプラインチェーンの混乱に拍車をかけ、2022年3月には8%台となりました。その後も8%以上を維持してきましたが、2022年10月に8ヶ月ぶりに7%台に鈍化し、2022年12月には1年1ヶ月ぶりに6%台になりました。とはいえ、引き続き高水準です。2021年12月は7.0%であったため、2年間で13.5%インフレしたことになります。
■米国項目インフレ率と直近半年間の推移
次に、米国のカテゴリ別インフレ率(CPI)と2022年の推移は以下の通りです。
前年同月比で、食品は+10.4%、エネルギーは+7.3%。食品・エネルギーを除くコアCPIは+5.7%です。項目別に見ていきます。
食品
前年同月比で+10.4%、前月比で+0.3%。シリアル・ベーカリー(前年同月比+16.1%、前月比+0.0%)、乳製品・関連製品(前年同月比+15.3%、前月比▲0.3%)が比較的高いです。ちなみに、卵は鳥インフルエンザで供給量が落ちている影響もあり、前年同月比+60%、前月比+11%を大きくインフレしています。
エネルギー
前年同月比で+7.3%。前月比では▲4.5%と2ヶ月連続で下落しました。前年同月比で、燃料オイル+41.5%、ガス+19.3%、電気+14.3%等、全般的に上昇しています。一方で、ガソリンは前年同月比▲1.5%、前月比▲9.4%と大幅に下落しています。全米ガソリン価格も下落基調で、12月下旬の価格は1ガロン$3.1と、直近の高値($5.0、2022年6月)と比較して約38%下落しています。これまで、ガソリンのインフレは2022年2月に始まったロシア・ウクライナ戦争による影響が大きかったですが、世界経済の減速に伴い需要が減少し、ロシア・ウクライナ戦争開始以前を下回る水準まで下落しました。
新車・中古車
新車は、前年同月比で+5.9%、前月比で▲0.1%。中古車は前年同月比で▲8.8%と大幅に下落しました。前月比で7月▲0.4%、8月▲0.1%、9月▲1.1%、10月▲2.4%、11月▲2.9%、12月▲2.5%と、6ヶ月連続で下落しています。マンハイム指数(アメリカの中古車販売最大手のマンハイム社が発表している指数。正確には、Manheim Used Vehicle Value Index)を見ても、2022年に入ってから下落トレンドであり、直近の高値の257.7(2022年1月)から15%程度下落しています。
マンハイム指数を車種別に見ても、全車種で価格が落ちています。2022年9月時点では全体的に下落基調の中でもコンパクトカーが前年同月比+5.9%等、割安な価格帯のものを中心にインフレが続いている車種もありましたが、現在では全車種において前年同月比で12%以上下落しています。
住居費
前年同月比で+7.5%、前月比で0.8%。先月に続いてコアCPIを上回る水準でインフレしています。全体の支出の32.7%を占めるため、影響が大きいです。
一方で、CPIの住居費は、調査方法の特性上数ヶ月の遅行性があり、足元では異なる動きがあります。BISNOWの記事によると、Apartment.com等の複数の賃貸住宅ポータルサイト運営会社が、2022年第三四半期(7~9月)にて募集賃料が減少に転じたと報告しています。同記事によると、Z世代の労働者の一部が一人暮らしを断念し親と過ごすことや、ルームシェアを選択する賃貸人が増えていること等が背景にあるようです。
私が業務で賃貸住宅マーケットを見ている実感としても、ボストンをはじめ米国の多くの地域において、特にハイエンドな住宅の募集賃料は8月頃から徐々に下がり始めており、12月頃から0.5~1ヶ月分程度のフリーレントを付与する賃貸住宅も多くなってきました。
航空運賃
前年同月比で+28.5%と大きく上昇している一方で、前月比では10月▲1.1%、11月▲3.0%、12月▲3.1%を3ヶ月連続で下落しています。
■平均時給
米国の平均時給を見ると、前年同月比+4.6%、前月比+0.3%でした。11月のデータも全同月比を+5.1%から+4.8%、前月比を+0.6%から+0.4%へ下方修正されました。2021年9月頃から5%程度の高い増加率が続いており、特にサービス業のインフレに繋がっていますが、1年4ヶ月ぶりに4.8%を切る水準に下落しました。
■金利予測
最後に、現時点でのFOMC(米国連邦公開市場委員会)関係者の金利予測を纏めておきます。以下のグラフは「Fed’s Dot Plot」と呼ばれる、各関係者の予測値をグラフにしたものです。予測値の中央値は青で掲載されています。
各年末の予測値の中央値を纏めると以下の通りです。インフレ鈍化を受けて、12月のFOMCでハト派よりの修正があるか注目されましたが、実際にはタカ派よりの修正となりました。
- 2022年末:4.375%(9月の予測値4.375%から±0.000%)
- 2023年末:5.125%(9月の予測値4.625%から+0.500%)
- 2024年末:4.125%(9月の予測値3.875%から+0.250%)
- 2025年末:3.125%(9月の予測値3.125%から±0.000%)
- 2026年末:2.500%(9月の予測値なし)
■まとめ
投稿者プロフィール
- 1988年生まれ。神奈川県出身。2011年に慶應義塾大学理工学部を卒業し不動産デベロッパーに入社。2017年より米国ピッツバーグ大学に留学。2019年にBeta Gamma Sigma (優秀な成績を収めた卒業生に送られる称号)で卒業しMBA取得。2019年以降米国不動産業に従事し、2021年以降ボストンを拠点にオフィスや賃貸住宅のアセットマネジメント業務に従事。
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