米国のインフレ率(2022年11月)

先日、米国の2022年11月インフレ率(CPI)が発表され、前年同月比で予想7.3%に対して結果は7.1%でした。食品とエネルギーを除くコアCPIは予想6.1%に対して結果は6.0%でした。今回もカテゴリ別のインフレ率を見ていきます。

ボストンエリアのインフレ率をご覧になりたい方は以下の記事をご覧ください。

ボストンのインフレ率(2022年11月)

先日、ボストンの2022年11月インフレ率(CPI)が発表され、前年同月比+7.0%、2ヶ月前比+0.6%となりました。今回もカテゴリ毎に見ていきます。 米国全体の2022年11月の…

woman sitting behind a desk using laptop and looking at items on a receipt

■米国のインフレ率推移

まず、米国の2020年以降のインフレ率(CPI)前年同月比は以下の通りです。

米国のインフレ率(CPI)
(U.S. Bureau of Labor Statisticsの情報を基に作成)

米国のCPIは、コロナ禍で一度低迷した後、サプライチェーンの混乱と旺盛な需要が重なり2021年5月に5%台となり、その後も段々と上昇しました。中国のゼロコロナ政策やロシアによるウクライナ侵攻がサプラインチェーンの混乱に拍車をかけ、2022年3月には8%台となりました。その後も8%以上を維持してきましたが、2022年10月に8ヶ月ぶりに7%台に鈍化し7.7%となり、今月11月も7.1%とさらに鈍化しました。予想(7.3%)は下回ったものの、引き続き高水準です。2021年11月は6.8%であったため、2年間で13.9%インフレしたことになります。

■米国項目インフレ率と直近半年間の推移

次に、米国のカテゴリ別インフレ率(CPI)と2022年の推移は以下の通りです。

米国のインフレ率(CPI)と直近半年間の推移
U.S. Bureau of Labor Statistics)

前年同月比で、食品は+10.6%、エネルギーは+13.1%。食品・エネルギーを除くコアCPIは+6.0%(予測+6.1%)です。項目別に見ていきます。

食品

前年同月比で+10.6%、前月比で+0.5%。シリアル・ベーカリー(前年同月比+16.4%、前月比+1.1%)、乳製品・関連製品(前年同月比+16.4%、前月比+1.0%)が比較的高いです。

エネルギー

前年同月比で+13.1%。前月比では▲1.6%と下落しました。前年同月比で、燃料オイル+65.7%、ガス+15.5%、電気+13.7%等、全般的に上昇しています。一方で、ガソリンは前年同月比+10.1%、前月比▲2.0%と一時期の高インフレと比べると鈍化が顕著になっています。全米ガソリン価格も下落基調で、11月下旬の価格は1ガロン$3.5と、直近の高値($5.0、2022年6月)と比較して約30%下落しています。12月も引き続き下落しているため、12月CPIでは更に鈍化することが想定されます。

全米ガソリン価格
(U.S. Energy Information Administration)

エネルギーはロシアによるウクライナ侵攻翌月の2022年3月以降、ボラティリティも大きいです。ウクライナ情勢も不透明かつ、OPECプラスが2022年11月から原油の日量200万バレル減産(世界需要の2%に相当)を行うことで合意したこともあり、先が読みづらい状況です。

新車・中古車

新車は、前年同月比で+7.2%、前月比で+0.0%。関連項目としては、前年同月比で自動車整備・修理(前年同月比+11.7%、前月比+1.3%)、自動車保険(前年同月比+13.4%、前月比+0.9%)も見逃せません。

一方で、中古車は前年同月比で▲3.3%と下落に転じました。前月比で7月▲0.4%、8月▲0.1%、9月▲1.1%、10月▲2.4%、11月▲2.9%と、5ヶ月連続で下落しています。マンハイム指数(アメリカの中古車販売最大手のマンハイム社が発表している指数。正確には、Manheim Used Vehicle Value Index)を見ても、2022年に入ってから下落トレンドであり、直近の高値の236.3(2022年1月)から14.3%程度下落しています。

マンハイム指数(アメリカの中古車販売最大手のマンハイム社が発表している指数)

マンハイム指数を車種別に見ても、全車種で価格が落ちています。2022年9月時点では全体的に下落基調の中でもコンパクトカーが前年同月比+5.9%等、割安な価格帯のものを中心にインフレが続いている車種もありましたが、現在では全車種において前年同月比で10%以上下落しています。

住居費

前年同月比で+7.1%、前月比で0.6%。先月に続いてコアCPIを上回る水準でインフレしています。全体の支出の32.7%を占めるため、影響が大きいです。

一方で、CPIの住居費は、調査方法の特性上数ヶ月の遅行性があり、足元では異なる動きがあります。BISNOWの記事によると、Apartment.com等の複数の賃貸住宅ポータルサイト運営会社が、2022年第三四半期(7~9月)にて募集賃料が減少に転じたと報告しています。同記事によると、Z世代の労働者の一部が一人暮らしを断念し親と過ごすことや、ルームシェアを選択する賃貸人が増えていること等が背景にあるようです。

私が業務で賃貸住宅マーケットを見ている実感としても、ボストンをはじめ米国の多くの地域において、特にハイエンドな住宅の募集賃料は8月頃から徐々に下がり始めており、12月頃から0.5~1ヶ月分程度のフリーレントを付与する賃貸住宅も多くなってきました。

航空運賃

前年同月比で+36.0%と大きく上昇している一方で、前月比では▲3.0%と下落しています。

■平均時給

米国の平均時給を見ると、前年同月比+5.1%、前月比+0.6%でした。2021年9月頃から5%程度の高い増加率が続いており、特にサービス業のインフレに繋がっています。

米国平均時給
(出典:FRED

■金利予測

最後に、現時点でのFOMC(米国連邦公開市場委員会)関係者の金利予測を纏めておきます。以下のグラフは「Fed’s Dot Plot」と呼ばれる、各関係者の予測値をグラフにしたものです。予測値の中央値は青で掲載されています。

Fed’s Dot Plot(FOMC関係者の各予測値)と予測中央値
(出典:Chatham Financial

各年末の予測値の中央値を纏めると以下の通りです。インフレ鈍化を受けて、12月のFOMCでハト派よりの修正があるか注目されましたが、実際にはタカ派よりの修正となりました。

  • 2022年末:4.375%(9月の予測値4.375%から±0.000%)
  • 2023年末:5.125%(9月の予測値4.625%から+0.500%)
  • 2024年末:4.125%(9月の予測値3.875%から+0.250%)
  • 2025年末:3.125%(9月の予測値3.125%から±0.000%)
  • 2026年末:2.500%(9月の予測値なし)

■まとめ

米国のインフレ率(2022年11月)

  • 米国の2022年11月のインフレ率(CPI)は、前年同月比+7.1%(予測+7.3%)
  • 2021年12月以来で初めて7.5%を下回ったものの以前として高水準
  • 前年同月比で、食品は+10.6%、エネルギーは+13.1%。食品・エネルギーを除くコアCPIは+6.0%(予測は6.1%)
  • 自動車関連では、前年同月比で新車+7.2%、中古車▲3.3%。中古車は前月比で7月以降5ヶ月連続で下落。
  • マンハイム指数(アメリカの中古車販売最大手のマンハイム社が発表している指数)を見ると、2022年に入ってから下落トレンドであり、10月及び11月は全車種で下落。
  • 全体の支出の32.7%を占める住居費は前年同月比+7.1%、前月比+0.6%
  • 一方で、CPIの住居費は調査方法の特性上数ヶ月の遅行性があり、足元で募集賃料下落の傾向があり
  • 航空運賃は前年同月比+36.0%と高止まりしているものの、前月比では▲3.0%。
  • 米国平均時給は、前年同月比+5.1%、前月比+0.6%。2021年9月頃から5%程度の高い増加率が継続
  • 12月FOMCでは、将来の金利予測について若干のタカ派よりの修正

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投稿者プロフィール

Take
1988年生まれ。神奈川県出身。2011年に慶應義塾大学理工学部を卒業し不動産デベロッパーに入社。2017年より米国ピッツバーグ大学に留学。2019年にBeta Gamma Sigma (優秀な成績を収めた卒業生に送られる称号)で卒業しMBA取得。2019年以降米国不動産業に従事し、2021年以降ボストンを拠点にオフィスや賃貸住宅のアセットマネジメント業務に従事。

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