米国のインフレ率(2022年9月)

先日、米国の2022年9月インフレ率(CPI)が発表され、前年同月比で予想8.1%に対して結果は8.2%でした。食品とエネルギーを除くコアCPIは予想6.5%に対して結果は6.6%でした。今回もカテゴリ別のインフレ率を見ていきます。

ボストンエリアの2022年9月のインフレ率をご覧になりたい方は以下の記事をご覧ください。

woman sitting behind a desk using laptop and looking at items on a receipt

■米国のインフレ率推移

まず、米国の2020年以降のインフレ率(CPI)前年同月比は以下の通りです。

米国のインフレ率(CPI)
(U.S. Bureau of Labor Statisticsの情報を基に作成)

米国のインフレ率は、コロナ禍で一度低迷した後、サプライチェーンの混乱と旺盛な需要が重なり2021年5月に5%台となり、その後も段々と上昇しました。中国のゼロコロナ政策やロシアによるウクライナ侵攻がサプラインチェーンの混乱に拍車をかけ、2022年3月には8%台となりました。その後も8%以上を維持しています。2021年9月のインフレ率は5.4%であったため、2年間で13.6%インフレしています。

■米国項目インフレ率と直近半年間の推移

次に、米国のカテゴリ別インフレ率(CPI)と直近半年間の推移は以下の通りです。

米国のインフレ率(CPI)と直近半年間の推移
U.S. Bureau of Labor Statisticsの情報を基に作成)

前年同月比で、食品は+11.2%、エネルギーは+19.8%。食品・エネルギーを除くコアCPIは+6.6%(予測6.5%)です。項目別に見ていきます。

食品

前年同月比で+11.2%。シリアル・ベーカリー+16.2%、乳製品・関連製品+15.9%が比較的高いです。

エネルギー

前年同月比で+19.8%。前月比で見た時に、7月は▲4.5%、8月は▲6.2%、9月は▲2.6%となっており、3ヶ月連続で下落しています。前年同月比で、燃料オイル+58.1%、ガソリン+18.2%、ガス+33.1%等、全般的に上昇しています。エネルギーはロシアによるウクライナ侵攻翌月の2022年3月以降、ボラティリティも大きいです。OPECプラスが11月から原油の日量200万バレル減産(世界需要の2%に相当)を行うことで合意したこともあり、上昇に転じる可能性もあるため、ピークアウトしたとは言いづらい状況です。

新車・中古車

前年同月比で新車+9.4%、中古車+7.2%。共にコアCPIの+6.3%を上回っています。関連項目としては、前年同月比で自動車整備・修理+11.1%、自動車保険+10.3%も見逃せません。

一方で、中古車は前月比で8月▲0.4%、9月▲4.2%と、2ヶ月連続で下落しています。マンハイム指数(アメリカの中古車販売最大手のマンハイム社が発表している指数。正確には、Manheim Used Vehicle Value Index)を見ても、2022年に入ってから下落トレンドであり、直近の高値の236.3(2022年1月)から13.5%程度下落しています。

マンハイム指数(アメリカの中古車販売最大手のマンハイム社が発表している指数)

マンハイム指数を車種別に見ると、前年同月比でコンパクトカーが+5.9%に対して、ラグジュアリーカーが▲4.8%です。インフレによる生活コストの上昇や急速な金利上昇を背景に、高額商品の購入が避けられる傾向にあります。

住居費

前年同月比で+6.6%。先月まではコアCPIを下回る水準でしたが、ここにきてコアCPIと同水準まで上昇しています。全体の支出の32.5%を占めるため、影響が大きいです。

一方で、異なる傾向もあります。BISNOWの記事によると、Apartment.com等の複数の賃貸住宅ポータルサイト運営会社が、2022年第三四半期(7~9月)にて募集賃料が減少に転じたと報告しています。同記事によると、Z世代の労働者の一部が一人暮らしを断念し親と過ごすことや、ルームシェアを選択する賃貸人が増えていること等が背景にあるようです。

私が業務で賃貸住宅マーケットを見ている実感としても、ボストンをはじめ米国の多くの地域において、特にハイエンドな住宅の募集賃料は8月頃から徐々に下がり始めています。部屋のタイプでは大きい部屋より小さい部屋、部屋数も2ベッドより1ベッドが好まれる傾向にあり、賃貸人が少しでも支出を抑えようとしているように感じます。

航空運賃

前年同月比で+42.9%と大きく上昇しています。前月比では、7月▲9.6%、8月▲8.8%となっており、2ヶ月連続で下落した後に、9月+0.1%と再度上昇に転じています。

■金利予測

インフレが高止まりすると、インフレ退治のために金利を上げざるを得ません。最後に、現時点でのFOMC(米国連邦公開市場委員会)関係者の金利予測を纏めておきます。以下のグラフは「Fed’s Dot Plot」と呼ばれる、各関係者の予測値をグラフにしたものです。予測値の中央値は青で掲載されています。

Fed’s Dot Plot(FOMC関係者の各予測値)と予測中央値
(出典:Chatham Financial

各年末の予測値の中央値を纏めると以下の通りです。

  • 2022年末:4.375%(1ヶ月前の予測値3.375%から+1.000%)
  • 2023年末:4.625%(1ヶ月前の予測値3.750%から+0.875%)
  • 2024年末:3.875%(1ヶ月前の予測値3.375%から+0.500%)
  • 2025年末:3.125%(1ヶ月前の予測値2.500%から+0.625%)
  • 2025年末:2.500%(1ヶ月前の予測値なし)

インフレの高止まりを受けて、1ヶ月で(9月のFOMCで)大幅に上方修正されたことが分かります。

■まとめ

  • 米国の2022年9月のインフレ率(CPI)は、前年同月比で予想8.1%に対して結果は8.2%
  • 2022年3月以降、8%以上で高止まり
  • 前年同月比で、食品は+11.2%、エネルギーは+19.8%。食品・エネルギーを除くコアCPIは+6.6%(予測は6.5%)
  • エネルギーは高い水準であるものの、7月は前月比▲4.5%、8月に前月比▲6.2%、9月に前月比▲2.6%と3ヶ月連続で下落
  • 自動車関連では、前年同月比で新車+9.4%、中古車+7.2%、自動車整備・修理+11.1%、自動車保険+10.3%
  • 一方で、中古車は8月に前月比▲0.4%、9月に前月比▲4.2%と2ヶ月連続で下落。マンハイム指数(アメリカの中古車販売最大手のマンハイム社が発表している指数)を見ると、2022年に入ってから下落トレンドであり、特にラグジュアリカーの下落が顕著。
  • 全体の支出の32.5%を占める住居費は前年同月比+6.6%
  • 一方で、比較的ハイエンドな賃貸住宅が掲載されているApartment.com等の複数の賃貸住宅ポータルサイト運営会社が、2022年第三四半期(7~9月)にて募集賃料が減少に転じたと報告している

投稿者プロフィール

Take
1988年生まれ。神奈川県出身。2011年に慶應義塾大学理工学部を卒業し不動産デベロッパーに入社。2017年より米国ピッツバーグ大学に留学。2019年にBeta Gamma Sigma (優秀な成績を収めた卒業生に送られる称号)で卒業しMBA取得。2019年以降米国不動産業に従事し、2021年以降ボストンを拠点にオフィスや賃貸住宅のアセットマネジメント業務に従事。

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