ボストンのインフレ率(2022年11月)

先日、ボストンの2022年11月インフレ率(CPI)が発表され、前年同月比+7.0%、2ヶ月前比+0.6%となりました。今回もカテゴリ毎に見ていきます。

米国全体の2022年11月のインフレ率をご覧になりたい方は以下の記事をご覧ください。

米国のインフレ率(2022年11月)

先日、米国の2022年11月インフレ率(CPI)が発表され、前年同月比で予想7.3%に対して結果は7.1%でした。食品とエネルギーを除くコアCPIは予想6.1%に対して結果は6.0%…

woman sitting behind a desk using laptop and looking at items on a receipt

■ボストンのインフレ率推移

まず、米国とボストン*の2020年以降のインフレ率(CPI)前年同月比は以下の通りです。

*「Boston-Cambridge-Newton, MA-NH MSA」という統計地域のデータを参照しています。エリアの定義を確認したい場合はこちらをどうぞ。

米国とボストンのインフレ率(CPI)
(U.S. Bureau of Labor Statisticsの情報を基に作成)

ボストンのインフレ率は米国全体の傾向と同様に、コロナ禍で一度低迷した後、サプライチェーンの混乱と旺盛な需要が重なり上昇しました。その後、中国のゼロコロナ政策やロシアによるウクライナ侵攻がサプラインチェーンの混乱に拍車をかけ、2022年3月には7%台となりました。それでも、ボストンは住宅費のインフレが米国の他エリアと比べると比較的抑えられていることもあり、米国全体と比べると1%程度低い状態が続いていました。

ところが、9月は食品やエネルギーを中心に米国全体を上回る水準でインフレが進み、11月はエネルギーにおいて米国全体を大きく上回る水準でインフレが進んだことが原因で、9月以降は米国と同水準で推移しています。

■ボストンのカテゴリ別インフレ率と直近半年間の推移

次に、ボストンのカテゴリ別インフレ率(CPI)と直近半年間の推移は以下の通りです。

ボストンのインフレ率(CPI)と直近半年間の推移
U.S. Bureau of Labor Statisticsの情報を基に作成)

食品・飲料は前年同月比で+10.4%、エネルギーは前年同月比で+29.5%、食品・エネルギーを除くコアCPIは前年同月比で+4.7%でした。主な項目を見ていきます。

食品

食品・飲料全体は前年同月比で+10.4%、2ヶ月前比で+0.0%。乳製品・関連製品(前年同月比+21.3%・2ヶ月前比+2.9%)、ノンアルコール飲料・飲料材料(前年同月比+19.7%・2ヶ月前比+0.6%)のインフレが比較的高いです。

エネルギー

エネルギー全体は前年同月比で+29.5%、2ヶ月前比で+12.9%。特に、電気(前年同月比で+46.7%、2ヶ月前比で+23.9%)ガス(前年同月比で+28.6%、2ヶ月前比で+18.6%)のインフレが比較的高く、米国全体の水準も大きく上回っています。NBC10 BOSTONの記事によると、ニューイングランドエリアで大手の電力・ガス会社であるNational Gridは、ウクライナ戦争、高い需要、コストインフレ等複数の理由により値上げせざると得ない状況であり、2022年11月1日より、電気料金は平均で64%、ガス料金は平均で24%上がるとコメントしています。

ボストンの電気代高騰の理由をご覧になりたい方はこちらをご覧ください。

2022年冬におけるボストンの光熱費の最新動向

現在、ウクライナ戦争やコストインフレ等によりエネルギーコストの急激な上昇が問題になっていますが、ボストンにおいても特に電気代においてその現象は顕著です。今回は…

一方で、ガソリンは米国全体の傾向と同様にも前年同月比+12.9%、2ヶ月前比+1.3%と、一時期の高インフレと比べると鈍化が顕著になっています。全米ガソリン価格も下落基調で、11月下旬の価格は1ガロン$3.7と、直近の高値($5.1、2022年6月)と比較して約26%下落しています。

全米及びボストンのガソリン価格
(U.S. Energy Information Administration)
新車・中古車

新車は前年同月比で+3.9%、2ヶ月前比で+0.7%。中古車は前年同月比で▲3.5%。2ヶ月前比で▲5.4%。米国全体と同様に、新車のインフレが鈍化すると共に、中古車に関しては下落に転じています。

住居費

住宅費は前年同月比で+4.9%、2ヶ月前比で+0.5%。米国全体の水準(前年同月比+7.1%・2ヶ月前比+0.6%)より抑えられてます。

ここ2年ほどボストンの家賃は上昇し続けてきましたが、異なる傾向もあります。BISNOWの記事によると、Apartment.com等の複数の賃貸住宅ポータルサイト運営会社が、2022年第三四半期(7~9月)にて募集賃料が減少に転じたと報告しています。同記事によると、Z世代の労働者の一部が一人暮らしを断念し親と過ごすことや、ルームシェアを選択する賃貸人が増えていること等が背景にあるようです。Coliliersのレポートによると、ボストンの賃貸住宅の空室率は4.2%から4.8%へ悪化しました。以前として低水準ではあるものの、経済の不透明感が増していることもあり、今後住居費のインフレは鈍化していくことが想定されます。

私が業務で賃貸住宅マーケットを見ている実感としても、ボストンをはじめ米国の多くの地域において、特にハイエンドな住宅の募集賃料は8月頃から徐々に下がり始めています。部屋のタイプでは大きい部屋より小さい部屋、部屋数も2ベッドより1ベッドが好まれる傾向にあり、賃貸人が少しでも支出を抑えようとしているように感じます。

■まとめ

ボストンのインフレ率(2022年11月)

  • ボストンの2022年11月のインフレ率(CPI)は、前年同月比で+7.1%、2ヶ月前比で+0.6%
  • 食品・飲料は前年同月比で+10.4%、2ヶ月前比で+0.0%。特に、乳製品・関連製品(前年同月比+21.3%・2ヶ月前比+2.9%)、ノンアルコール飲料・飲料材料(前年同月比+19.7%・2ヶ月前比+0.6%)のインフレが高水準。
  • エネルギーは前年同月比で+29.5%、2ヶ月前比で+12.9%。特に、電気(前年同月比で+46.7%、2ヶ月前比で+23.9%)ガス(前年同月比で+28.6%、2ヶ月前比で+18.6%)のインフレが高水準。
  • 新車は前年同月比で+3.9%、2ヶ月前比で+0.7%。中古車は前年同月比で▲3.5%。2ヶ月前比で▲5.4%
  • 住宅費は、前年同月比で+4.9%、2ヶ月前比で+0.5%。家賃はここ2年程インフレが続いてきたが、2022年第三四半期(7~9月)にて募集賃料が減少に転じた。空室率も第二四半期(4~6月)と比べると4.2%から4.8%に悪化しており、今後インフレの鈍化が想定される。

投稿者プロフィール

Take
1988年生まれ。神奈川県出身。2011年に慶應義塾大学理工学部を卒業し不動産デベロッパーに入社。2017年より米国ピッツバーグ大学に留学。2019年にBeta Gamma Sigma (優秀な成績を収めた卒業生に送られる称号)で卒業しMBA取得。2019年以降米国不動産業に従事し、2021年以降ボストンを拠点にオフィスや賃貸住宅のアセットマネジメント業務に従事。

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