2020~2024年の米国の人口推移とマサチューセッツ州の特徴

人口は比較的予測しやすいマクロ情報ですが、COVID19の影響により一時的に大都市離れが起きる等、2020年以降は予測しづらいことが起きました。今回は国勢調査局のデータを基に、2020年から2024年までの米国の人口推移とマサチューセッツ州の特徴を見ていきたいと思います。

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2010~2020年までの米国の人口推移とボストンの位置づけについてはこちらの記事で纏めています。

2010~2020年の米国の人口推移とマサチューセッツ州・ボストンの特徴

ビジネスにおいて人口は最も重要は経済指標のひとつです。今回は国勢調査のデータを基に、2010~2020年の米国の人口推移を見ていきます。また、その中でマサチューセッツ…

米国とエリア毎の人口成長率(2020~2024年)

まず、地域毎の人口成長率を見ていきます。米国は、国勢調査上では下図の通り、北東部、中西部、西部、南部の4つのエリアに区分されています。

米国4つのエリア
(出典:Mappr

2024年の米国全体の人口成長率は+0.98%で、コロナ禍以降最も高い成長率でした。2020~2024年の4年間の4つのエリア毎の成長率は以下の通りです。

米国とエリア毎の人口成長率
(出典:United State Census Bureau
米国とエリア毎の人口成長率
(出典:United State Census Bureau

2020年から一貫して南部の成長が突出しており、常に米国全体の成長率をアウトパフォームしてきました。2021年及び2022年は北東部が2年連続マイナス成長で最も低い成長率でしたが、2023年には中西部の成長率を逆転し2024年も更に高い成長率となりました。一方で、エリア毎の差が小さくなってきていることも分かります。

人が南部や西部に流れるトレンドは100年以上続いています。下図は1920~2020年の約100年間の4エリア毎の人口シェアですが、約100年前の1920年は北東部と中西部で約60%の人口を占めていました。しかし、2020年の同エリアのシェアは約38%まで減少しています。

1920年から2020年までの米国4エリア毎の人口シェア
(出典:William H. Frey analysis of US Decennial censuses 1920-2022.

2020~2024年の間においても、米国内で北東部や中西部から南部へ移住する動きが多いです。例えば、2024年の人口増加数の内訳を見ると、全エリアで自然増(出生ー死亡)や海外社会増(国外からの流入ー国外への流出)プラスですが、国内社会増(国内での流入ー国内での流出)は南部のみがプラス成長で他3エリアはマイナス成長であることが分かります。

また、米国全体の人口増加数約330万人の内、84%にあたる約279万人は海外社会増によるもので、移民が米国の人口増に大きく寄与していることが分かります。これは2022年の海外社会増+約170万人、2023年の海外社会増+230万人から見ても増加傾向ですが、トランプの移民政策次第ではこの傾向は変わるかもしれません。

2024年のエリア毎の人口増加数の内訳
(出典:United State Census Bureau

米国州毎の人口成長率(2020~2024年)

次に、州毎の人口成長率を見ていきます。2023年7月から2024年7月の1年間の州毎の人口成長率は以下の通りです。成長している州が南部や西部の内陸側(インターマウンテンウェストとも呼ばれます)に多いことが分かります。

2024年の州毎の人口成長率
(出典:United State Census Bureau

次の2020~2024年の4年間の州毎の人口成長率は以下の通りです。(2024年の成長率が高い順に記載しています。)

米国州毎の人口成長率
(出典:United State Census Bureau

2024年の成長率を見ると、1~10位は南部と西部が占めます。南部では、ワシントンD.C.(1位)、フロリダ州(2位)、テキサス州(3位)、サウスカロライナ州(5位)、ノースカロライナ州(8位)が上位に位置し、西部では内陸部であるウタ州(4位)、ネバタ州(6位)、アイダホ州(7位)が上位に位置します。

マサチューセッツ州は、2021年は+0.08%(32位/51州)2022年は+0.31%(27位/51州)2023年は+0.63%(25位/51州)といずれも米国全体より低く伸び悩みましたが、2024年は+0.98%(15位/51州)と米国全体と同等水準で成長しました。

米国州毎の人口増加数の内訳(2024年)

最後に、州毎の人口増加率の内訳を見ていきます。以下では、州毎に人口増加数合計の多い順番並べており、その内訳として、自然増、海外社会増、国内社会像を記載しています。

上記で、上げた2024年の人口成長率の高い南部や西部の内陸部の都市ではほとんどの州で、自然増、海外社会増、国内社会増共にプラスであることが分かります。一方で、北東部や西部海岸沿いの大都市では、海外社会増が多いものの国内社会増はマイナスです。例えば、国内社会増のワースト5の州は以下の通りです。

  1. カリフォルニア州:▲239,575
  2. ニューヨーク州:▲120,917
  3. イリノイ州:▲56,235
  4. ニュージャージー州:▲35,554
  5. マサチューセッツ州:▲27,480

対して、国内社会増のベスト5の州は以下の通りで、いずれも南部の州です。

  1. テキサス州:+85,267
  2. ノースカロライナ州:+82,288
  3. サウスカロライナ州:+68,043
  4. フロリダ州:+64,017
  5. テネシー州:+48,476

これらの数字から、引き続き北東部や西部海岸部の大都市等から南部への人の移動のトレンドが続いていることが示唆されます。

マサチューセッツ州の人口増加率が北東部の中で比較高いのは、海外社会増+90,217と多いことが理由です。上記の通り、国内社内増は▲27,480と全米ワースト5位の水準ではあるものの、海外社会増がそこを補い人口全体として+0.98%まで成長させる水準まで押し上げています。

この海外社会増の多さの要因としてはいくつかの理由が考えられますが、まずは世界的な教育・研究機関が多いことが挙げられます。具体的にはハーバード大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)、タフツ大学、ボストン大学等、世界トップクラスの教育・研究機関が集積しており、国外の研究者や学生を引き寄せています。

ボストンの大学についてはこちらに纏めています。

ボストンのトップ大学の比較

ボストン都市圏には、米国最古の大学であるハーバード大学の他、マサチューセッツ工科大学、ボストン大学等の多くの高等教育・研究期間が集中する、有数の学園都市です。…

また、特にボストンやケンブリッジはライフサイエンスの中心地としても知られており、Moderna、Vertex Pharmaceuticals、Biogen等のグローバルライフサイエンス企業が集積していることも寄与しています。

さらに、マサチューセッツ州には古くから移民の歴史があり、ボストン都市圏における外国人の割合は19.9%と米国全体の14.3%よりも多いです。中国、ブラジル、ドミニカ共和国等に加え、アイルランド・イタリア・ポルトガル・ロシア等のヨーロッパ各国からの移民も歴史的に多く、既存コミュニティがあり文化が根付いていることが更なる移民の流入に繋がります。

ボストンの移民についてはこちらに纏めています。

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まとめ

米国の人口推移とマサチューセッツ州の特徴(2020~2024年)

  • 米国全体とエリア毎(北東部、中西部、南部、西部)の特徴
    • 2024年の米国全体の人口成長率は+0.98%で、コロナ禍以降最も高い成長率
    • 2020年から一貫して南部の成長が突出しており、常に米国全体の成長率をアウトパフォーム
    • 全エリアで自然増(出生ー死亡)や海外社会増(国外からの流入ー国外への流出)はプラスだが、国内社会増(国内での流入ー国内での流出)は南部のみがプラス成長で他3エリアはマイナス成長
  • 州毎の特徴
    • 人口成長率では、1~10位は南部と西部が占める
      • 南部では、ワシントンD.C.(1位)、フロリダ州(2位)、テキサス州(3位)、サウスカロライナ州(5位)、ノースカロライナ州(8位)等
      • 西部では内陸部であるウタ州(4位)、ネバタ州(6位)、アイダホ州(7位)等
    • 北東部や西部海岸沿いの大都市では国内社会増がマイナスの州が多い一方で、南部では国内社会増が多い州が多く、引き続き北東部や西部海岸部の大都市等から南部への人の移動のトレンドが続いている
  • マサチューセッツ州の特徴
    • マサチューセッツ州は、2021年は+0.08%(32位/51州)2022年は+0.31%(27位/51州)2023年は+0.63%(25位/51州)といずれも米国全体より低く伸び悩んだものの、2024年は+0.98%(15位/51州)と米国全体と同等水準で成長
    • マサチューセッツ州は、国内社内増は▲27,480と全米ワースト5位の水準ではあるものの、海外社会増が+90,217と多いことで、全体としては+0.98%という米国同等水準まで押し上げている
    • 海外社会増が多いのは、世界的な教育・研究機関やグローバルライフサイエンス企業が集積していることに加え、移民の歴史が古く中国、ブラジル、ドミニカ強化国、ヨーロッパ各国等の既存コミュニティが存在するため

投稿者プロフィール

Take
1988年生まれ。神奈川県出身。2011年に慶應義塾大学理工学部を卒業し不動産デベロッパーに入社。2017年より米国ピッツバーグ大学に留学。2019年にBeta Gamma Sigma (優秀な成績を収めた卒業生に送られる称号)で卒業しMBA取得。2019年以降米国不動産業に従事し、2021年以降ボストンを拠点にオフィスや賃貸住宅のアセットマネジメント業務に従事。

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