米国の人口とボストンの位置づけ
ビジネスにおいて人口は最も重要は経済指標のひとつである。今回は国勢調査のデータを基に、米国の人口を複数の切り口で見ていく。また、その中でボストンの位置づけを解説する。COVID-19前後の違いを見るために、主に2010~2020年の10年間の傾向と2020~2021年の1年間に注目する。
■米国地域毎の人口成長率(2010~2020年の傾向)
まず、地域毎の人口成長率を見ていく。米国は、国勢調査上では4つのエリアに区分されている。下図の通り、北東部、中西部、西部、南部の4エリアである。
2010年から2020年の10年間での米国全体の人口成長率は+7.4%である。上記4つのエリア毎に見ると以下の通りである。
- 南部(South):+10.2%
- 西部(West):+9.2%
- 北東部(Northeast):+4.1%
- 中西部(Midwest):+3.1%
南部及び西部が米国平均を上回っている。一方で、北東部と中西部は米国平均を下回っている。
これは2010~2020年の10年間に限る話ではない。下図は直近約100年間の4エリア毎の人口シェアである。約100年前の1920年は、北東部と中西部で約60%の人口を占めていた。しかし、2020年の同エリアのシェアは約38%まで減少している。北東部や中西部の人口が減少しているわけではなく、南部及び西部の成長が著しい。
■米国地域毎の人口成長率(2020~2021年)
また、2020年から2021年の1年間の米国全体の人口成長率は0.12%である。同4エリア毎に見ると以下の通りである。
- 南部(South):+0.65%
- 西部(West):+0.05%
- 北東部(Northeast):▲0.64%
- 中西部(Midwest):▲0.14%
この1年間はCOVID-19の影響もあり、QOL(Quality of Life)を求めて南部へ移住する動きが加速した。その結果、南部の人口は+0.65%、北東部は▲0.64%と対照的な結果となった。
■米国州毎の人口成長率(2010~2020年)
次に、州毎の人口成長率を見ていく。2010年から2020年の10年間の州毎の人口成長率は以下の通り。
人口成長率ベスト3は以下の通り。
1位:ユタ州(UT、西部):18.4%
2位:アイダオ州(ID、西部):17.3%
3位:テキサス州(TX、南部):15.9%
1位のユタ州は、州都であるソルトレイクシティが大きく成長している。2位のアイダオ州も、州都であるボイシが大きく成長している。3位のテキサス州は、上記ユタ州・アイダオ州とは傾向がやや異なる。同州は人口・面積共に全米2位という大規模州でありながら、高い成長率を維持している。州都のオースティンを筆頭に、ダラス、ヒューストン、サンアントニオ等の大都市圏がいずれも高い成長を遂げている。
ボストンの位置するマサチューセッツ州の同10年間の成長率は+7.4%。米国平均と同水準である。北東部全体で+4.1%と伸び悩む中で、北東部内で最も高い成長率である。
■米国州毎の人口成長率(2020~2021年)
米国州毎の2020年から2021年の1年間の人口成長率は以下の図の通り。
西部や南部で高成長を遂げている州が多いことは、2020年までの10年間の傾向と変わらない。一方で、カリフォルニア州は西部でありながら、成長率が▲0.66%と大きく減少している。コロナ禍で移動が制限される中、都市に住むメリットが相対的に低くなったことが影響している。特に同州のサンフランシスコやサンノゼは家賃が元々著しく高かったこともあり、州外への移住が進んだ。同様の現象がニューヨーク州やシカゴの位置するイリノイ州でも見られ、大きく減少している。
ボストンの位置するマサチューセッツ州の同1年間の成長率は▲0.53%。上記3州程ではないが、米国平均を大きく下回っている。上記3州同様に、コロナ禍でボストンからの転出が進んだことが主な原因と考えられる。
■米国大都市圏毎の人口成長率(2010~2020年)
最後に、大都市圏毎の人口成長率を見ていく。大都市圏とは、米国の行政管理予算局(U.S. Office of Management and Budget)が定義している統計地域である。経済的な結びつきを基にエリアを区分けしている。そのため、ビジネスの観点では州毎よりも参照することが多い。
米国の大都市圏は全部で約400エリアあるため、今回は人口100万人以上の大都市圏を概ねカバーできる人口トップ50を比較する。
2010年から2020年の10年間の大都市圏毎の人口成長率は以下の通り。
トップ10を見てみると、1~9位は南部である。テキサス州からは、オースティン(1位、+33.1%)、ヒューストン(5位、+20.0%)、ダラス(6位、+19.9%)、サンアントニオ(8位、+19.2%)の4都市圏がランクインしている。フロリダ州からも、オーランド(2位、+25.2%)、ジャクソンビル(7位、+19.5%)の2都市圏がランクインしている。
ボストンの人口成長率は+8.1%の30位である。南部及び西部の成長都市に比べると低成長だが、北東部の中では最も高く成長している。
ちなみに、ここで言うボストン(=Bosotn-Cambridge-Newton, MA-NH Metro Area)は、ボストン市を中心とする周辺の都市圏含めたエリアを指す。グレーターボストンとも呼ばれる。(エリアの詳細を確認したい場合はこちらをどうぞ。)
■米国大都市圏毎の人口成長率(2020~2021年)
米国大都市圏毎の2020年から2021年の1年間の人口成長率は以下の通り。
2020~2021年の1年間で50都市の内、24都市の人口が減少している。特に、大規模な都市ほど減少している。そのため、50都市合計の増減数は約▲30万人と減少している。しかし、米国全体で見ると同1年間で+39万人増加している。COVID-19の影響で、大都市離れが進んだと考えられる。
トップ10を見てみると、2010~2020年の10年間の傾向と似ている。9位のカリフォルニア州のリバーサイドを除いて、9都市が南部である。テキサス州からは、オースティン(1位、+2.32%)、サンアントニオ(5位、+1.37%)、ダラス(6位、+1.27%)、ヒューストン(10位、+0.97%)の4都市圏がランクインしている。フロリダ州からも、ジャクソンビル(3位、+1.63%)、タンパ(8位、+1.3%)の2都市圏がランクインしている。
ボストンの人口成長率は▲0.74%の45位である。上述の通り、COVID-19により家賃の高い大都市の魅力が相対的に低下した。ワースト3のサンフランシスコ(50位、▲2.46%)、サンノゼ(49位、▲2.15%)、ニューヨーク(48位、▲1.63%)は、いずれもボストンより家賃の高い大都市である。
■まとめ
米国全体として、長期でも短期でも人口の重心が北東部や中西部から、南部や西部に移動している傾向にある。
2010~2020年の10年間では、ユタ州(州都:ソルトレイクシティ)やアイダオ州(州都:ボイシ)等の西部の内陸よりの中規模な州の人口が大きく成長している。また、大規模な州では、南部のテキサス州がオースティン、ヒューストン、ダラス、サンアントニオの高成長都市を抱え、大きく成長している。また、フロリダ州もオーランド、ジャクソンビル、タンパ等の高成長都市を抱え、大きく成長している。ボストンの人口はこれらの都市程ではないが、同10年間で+8.1%と米国全体をアウトパフォームしている。北東部では最も成長率が高い。
2020~2021年の1年間でも、引き続き南部で強い成長率を維持している。しかし、家賃の高い大都市(サンフランシスコ、サンノゼ、ニューヨーク等)を中心に大きく人口が減少している。ボストンも賃料の高い大都市のひとつであり、同1年間で▲0.74%と減少している。
投稿者プロフィール
- 1988年生まれ。神奈川県出身。2011年に慶應義塾大学理工学部を卒業し不動産デベロッパーに入社。2017年より米国ピッツバーグ大学に留学。2019年にBeta Gamma Sigma (優秀な成績を収めた卒業生に送られる称号)で卒業しMBA取得。2019年以降米国不動産業に従事し、2021年以降ボストンを拠点にオフィスや賃貸住宅のアセットマネジメント業務に従事。
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